院長のひとりごと

2024.11.27更新

不妊症と言えば基礎体温、といった感じで基礎体温を記録している方はお子さんを望まれて見える方が大部分ですが、一部避妊のために記録されている方も見えると思います。だいたい排卵が予定月経の14日±2日で起こるという学説を荻野久作博士が発表したのですが、こちらも今や避妊法のオギノ法とか言われて知られるようになってしまっていて、荻野先生も天国で苦笑して見えることでしょう。基礎体温は血液中の黄体ホルモンが2-5ng/ml上がると体温が0.3℃上昇するというもので、個人の感受性が大きく影響を及ぼします。少し上昇すると高温に移行する方も見える一方、なかなか上昇しない方も見えて、基礎体温が一番下がった日が排卵日というのもかなり不確かなことです。何故基礎体温が上昇するのかは分かっていません。ほかの種族でもみられますが鳥類は卵を温めるために体温が上昇するので理にかなっていますが、人類は赤ちゃんを卵から産むのではないので何故この上昇が存在しているのかは今もって不明なのです。ずいぶん昔、医師国家試験に基礎体温表の図が載っていてそこに矢印が付いていて、どの日が排卵日かという設問が出たことがありましたが、最終的に不適切設問とされて合採点採点対象からは除外されたという事もありました。大体体温が一番低くなった日が排卵日と言われても、今朝測定して昨日より基礎体温が低くなったとしても、明日はもっと低くなるのか分かりません。低くなるだろうと思って翌朝測定したら上昇してしまっていたと言うことも起こりえます。昔医師になるときにはこの基礎体温を6-7つに分類したもの松本の分類という型を憶えたものです。今では全くこの分類は意味をなさなくなっていますが、当時は血液中のホルモンを測定することが非常に難しく、時間もかかったために参考とされたのです。私が医師になった頃にラジオアイソトープによるホルモンの測定が可能となって放射性物質のトリチウムやヨードを使用して測定が可能となったのです。従って大学病院のような放射性物質を扱う施設が無いところでは測定が出来なかったのです。測定に使用した放射性物質は厳重に密閉されたドラム缶に貯蔵されて、放射性廃棄物として処理されていました。その後酵素抗体法という放射性物質を使用しなくても測定可能な試薬方法が登場してきて簡便に測定可能となったのです。さらには超音波装置で排卵が起こったか起こっていないかなどが分かるようになり、更に基礎体温の存在は薄れてきています。いままでにも、排卵も月経も起こっていないのにもかかわらず大本が一定の間隔で上下する方も見えましたし、排卵や月経が起こっているにもかかわらず体温が高温相のレベルで持続する方も見えました。ただし、時々アレレ?というような診察所見になっている時に参考になることもあります。ただその頻度は低いので私は患者さんに記録は必要というわけではありませんよと話しております。付けるのが苦痛であったりストレスになる型はやめて貰った方がよろしいですし、付けていないと不安になるような方や受診記録がわりにされている方の場合にはおつけいただいております。次回は超音波について書きましょうか。

投稿者: いくたウィメンズクリニック


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