リコンビナントのFSHと従来のhMGと作用はどう違うのですか
従来のhMGは尿から生成するものなのでLHというもう一つの卵巣を刺激する物質も一緒にある程度含まれてしまいます。そしてLHの含まれる度合いによって 数種類の製剤があります。リコンビナントのFSHはバイオで作られるためにLHを全く含んでいません。これが世に出たしばらくはhMGよりすぐれた注射液としての発表が数多くされましたが、ご多分に漏れずこの製剤もその後それほど刺激に対する優位性は初期に言われたほどではなく、体外受精胚移植でGnRHagonistを使用している際にはかえって途中で反応が落ちることがあるために同様にリコンビナントのLHの注射液(日本には入ってきていません)を使用しないといけないとか、年齢の高い人ではhMGの方が刺激注射としては適しているとか言うような論文が見られるようになっています。
リコンビナントのFSHとはどういうものですか
リコンビナントのFSHというのはバイオの技術により試験管内で作り出されたFSHのことです、従来のものはhMGと呼ばれています。これは更年期の女性の尿から抽出されるものに将来は取って代わられるとは思いますが、現在非常に高価なのと一部でしか保険の適応がなく単純な排卵障害では使いづらいのが問題点です。今は保険適応外の体外受精胚移植の際の刺激注射として使っている施設が多いのではと思います。
経膣超音波検査をうけたときに多嚢胞性卵巣(PCO)だと言われたのですが?
両方の卵巣どちらにも10mmくらいの小さな卵胞(卵子の入っているカプセル)がたくさん出来ているけれども、この中の一つが大きくなって排卵になってこない状態によく言われる病名です。正確にはこれだけでは診断には不十分で、男性ホルモンが高いことや脳下垂体というところから分泌され卵巣に働くFSHとLHというホルモンのうちLHが高くなっていることなどが必要です。診断の基準もその時々で変わってきていますが、現在はこれが用いられています。単純に経膣超音波検査だけで多嚢胞性卵巣と言われて見える方が多いようです。このような超音波所見は単純は排卵障害やピルを飲んでいるときにも見受けられる所見で、これがあればという所見ではありません。
排卵誘発剤にはどういうものがあるのですか?
よく用いられるものには経口剤としてクロミッドやセキソビッドという薬があります。
これらの薬は脳の中央やや下方にある視床下部というところに作用して、排卵のリズムを作っている部位を刺激して排卵を起こします。
これに対してhMGは、視床下部から出た刺激が伝わる下垂体という部位から、さらにその刺激を卵巣に伝える役目を持つホルモンのFSH(卵胞刺激ホルモン)と構造が似ているために直接卵巣を刺激する役目を持ちます。
これらのほかには併用として用いられるものとして、ブロモクリプチン製剤、副腎皮質ステロイド剤などがあります。
HMGという排卵誘発剤は多胎が増えると聞きましたが・・・
排卵障害の方に使用しますと、妊娠した場合には15-20%の頻度で多胎がおきます。
残念ながらこれは完全に避けることは出来ません。
クロミッドでは多胎は起きないのでしょうか?
生理がこない(無月経)方や無排卵周期症(生理は周期的に来るが排卵が起こっていない)の方に投与しますと、妊娠された場合には約6%の頻度で多胎が起こります。
HMGを使用して排卵誘発を行う場合、卵巣の過剰刺激や多胎を起こさないように出来ないのでしょうか?
いろいろと投与の仕方についての報告はあります。
徐々に投与量を増加させる方法、逆に最初に少し多めに使用してその後で使用する量を減らす方法などがあります。
さらには薬を特殊なポンプで少しずつ皮下に注入するという治療も報告されていますが、残念ながら完全に予防できるという満足のいく程の結果にはなっていません。
途中でGnRHという薬に変更して誘発を行う方法も発表されていますが、薬が保険適応でないことや、先に述べたような特殊な機械が必要であること、またこの機械を24時間携帯していないといけないことから、研究的な目的で行われることが多く、残念ながら一般に行われる治療として普及するまでにはなっていません。
HMGで排卵誘発を受けていたのですが、過剰刺激が起こりそうだということで、治療が途中でうち切られました。これは仕方がないのでしょうか?
そうですね。
これは仕方がないかもしれません。
HMGを使用していて卵胞(卵子の入った殻)がたくさん出来てきた場合、hCGを使用する前で中止することがあります。
hCGを投与してしまうと過剰刺激は避けられなくなります。
従って重度の過剰刺激が明らかに起こりそうな場合には、hCGを使用せずに中止することがあります。
さもないと卵巣は10cm以上になってしまい、腹水貯留(お腹に水がたまってくる)や、ひどい場合には胸水(胸の肺の周りに水がたまる)が貯留して呼吸が苦しくなる場合すらあるからです。
HMGの薬にもいろいろなものがあるということですがどう違うのでしょう?
今現在のHMGという薬は尿から抽出して作っています。
この薬を作る際に目的とするFSHのみでなく、LHというホルモンも一緒に抽出されてきてしまいます。
現在の薬の違いはこのLHの含有量の違いがその特徴とされています。
近い未来日本でも(もう外国では一般に使用されています)バイオの技術でFSHというホルモンを作り出させた製剤がでてきますが、これはLHが全く0となります。
hCGというのは排卵誘発剤なのでしょうか?またこれはどういう薬でしょうか?
HMGやクロミッドなどのいわゆる排卵誘発剤とは違いますが、このホルモンの構造がLHと非常に似通っていて、身体に及ぼす作用もほぼ同じなため、卵子の入った殻である卵胞が十分に発育しているときに排卵を起こすことが出来ます。
こういう意味では排卵誘発目的に使用もされます。
このほかには黄体期(高温相の期間)に卵巣からホルモンを十分に分泌させるために使用もします。
ちなみにこのホルモンは妊娠したときに産生され妊娠診断の検査の時に検出するホルモンです。
従って黄体期にこのホルモン注射を何度か行って、あまり日にちをおかずに妊娠検査をされますと、うっすら検査が陽性になってしまいますのであわてて検査を行わないように注意が必要です。